先日、シアトル市内のエコ住宅を見学できる「Green Home Tour」が開催されました。
環境に優しい住宅作りはもちろん、生活スタイルも含めてエコに取り組んでいる住宅をご紹介します。
1 軒目は 1908 年に建てられた 107 歳にもなる古い家ですが、きれいに改装され、ガレージ前には電気自動車の充電ステーションがあり、裏庭は家庭菜園やニワトリ小屋などありました。
この家は、消費するエネルギーを自家太陽光発電やヒートポンプなどから自家生産しており、実質の電気代等がゼロになるネットゼロホームです。
またいくつもの貯水タンクに雨水を貯め、雨水を庭の水遣りにあてているそう。
シアトルは雨が多いので水道代の節約にとても有効です。
次も 1910 年に建てられた古い家ですが、二重ガラスの使用はもちろん、耐久性に優れた竹製の床の下に合板の床を敷いた二層の床が空気の漏れを防いだり、天井裏断熱など細部に渡る省エネ技術の採用で高断熱の住宅になっています。断熱材は外壁のセルロースを始め、使い古したジーパンを室内の壁に断熱材として使用し、防音にも役立っています。
廃品として回収されたものに新しい役目を与え第二の命を吹き込んであげる事は、やたらめったらエコ商品を買うよりもよっぽどエコだという概念は今や当たり前に浸透していて、どのエコ住宅でもどこかでこのコンセプトを取り入れているのが印象的でした。
北向きのキッチンは暗くなりがちですが、スカイライトを付けで自然光を取り込み、またトイレもグリーンハウス窓とスカイライトで明るく保たれています。
省エネ住宅では当たり前の太陽光発電パネルが取り付けられた屋根はメタル製の明るい色を取り入れ、夏場天井裏の温度が上がるのを抑えると共に、屋根から集める雨水の質を保つのにも役立ちます。
3 台の貯水タンクは 8000 リットル以上の水を溜めることができ、庭の水遣りはもちろんトイレの水洗にも利用しているそうで、平均的なシアトルの家庭より 75% も水道代を抑えています。
裏庭やドライブウェイの足場には川石を使った透過性のあるコンクリートが敷き詰められていて、雨水が地面に浸み込むようになっています。
シアトルは大雨の時などに、雨水が舗道に流れ出して道から水が溢れ出ている光景をよく見かけますが、この方法で排水溝の溢れを抑える他、雨水に含まれる有害物質が直接水源に流れ込むのを防ぐので、地域の水質汚染改善も考えたとてもエコなやり方です。
家で洗車する時もそうですが、水がコンクリートのドライブウェイや道路上を流れると有害物質を含む洗剤など全て下水に流れ込んでしまうので、近隣の川や海をすぐに汚染してしまいます。ですが土や草の上で洗うと地中の微生物が成分を分解してくれるため、水質汚濁などの直接的な環境汚染を防ぐことができます。
庭には家庭菜園があるのはもちろん、蜂箱を設置し家庭菜園の収穫量に大きく影響する蜂を誘致したり、流行の多肉植物のディスプレーを飾るなど、環境も見た目も重要視した庭造りが印象的でした。
この他も合わせて全部で 9 軒のエコ住宅を見て回ることができましたが、どの住宅も省エネサッシ始めソーラーパネル、雨水タンクは当たり前に使っていて、家庭菜園や野菜クズ等を使った堆肥作り、ニワトリの飼育など家庭からできるエコな生活スタイルを積極的に取り入れていました。
最近住宅街でよく見かけるコミュニティライブラリーという箱があちこちに立っていました。
この箱の中には地域の人が寄付した本や雑誌などが入っていて、誰でも自由に借りられます。
古い本や雑誌もリサイクルに出せば資源として再利用できますが、その再利用の前に他の人と共有する事で、誰かの役に立ったり、物の寿命を最大まで生かす事に繋がりますね。
また子供が作った工作を道端に並べてアート交換所にしているのにはほんわかしました。
このツアーでは、シアトルダウンタウン北に位置する Ballard や Phinney Ridge といった閑静な住宅街をメインに回りましたが、竹や古い木で造ったフェンスも個性が溢れてとても素敵なエリアでした。
また夏場毎週開かれるファーマーズマーケットも大賑わいでした。
高級住宅を見るのも夢があって楽しいですが、こういった一般住宅でも見所が一杯ありますね。